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「 僕が写真を撮る理由 」

01 なんでもない日々に、カメラがあった

写真はいつから始めましたか。

進路に悩んでいた19歳のある日、ふと家で祖父母のカメラを見つけたんです。それが、「写真の学校に行ってみようかな」と思ったきっかけでした。当時は、まさか将来の仕事につながるなんて想像もしていませんでしたが、今振り返ると、あの頃からカメラや写真は、いつも自然にそばにあったように思います。

そうして入学した日本写真映像専門学校には、写真館の2代目・3代目といった、写真業界に縁の深い同級生が多く在籍していました。実家の写真館を継ぐことが決まっているような、もの凄いカメラを持ったひとや、大きな夢を持ったひとばかり。そんな環境のなか、当時の僕は目標もなく、ただ学校に通うのが精一杯だったことを覚えています。転機となったのは、写真で表現することの楽しさを教えてくれた恩師との出会い。そこから「写真家」という生き方に興味を持つようになり、自分でも作品を撮りながら、写真家になる夢を追いかけ始めました。

今と同じような、人物を撮られていたんですか。

いえ、Y字路(笑)。
色々な被写体のなかで特に心惹かれていたのが、道端でよく見かける「Y字路」のような分かれ道の風景でした。その情景を求めて、日本各地を巡りながら写真を撮り続けていました。卒業後は、実家の自営業を手伝いながら、合間の時間で作品づくりを続けていた時期でもあります。

02 ひとだけじゃなく、心の風景を写しとる仕事

スタジオを始めたばかりの頃は、どのような毎日だったのでしょうか。

30歳を迎えた頃に写真館に転職し、2年半の経験を経て独立。フリーランスとしてウェディングの式場カメラマンの活動を始めました。そしてその5年後、念願だった自分のスタジオを持つことができました。

今では多くのお客さまを撮影させていただいていますが、当時の自分は、そんな未来が待っているとは思いもしませんでした。オープンしたばかりの頃は予約がほとんど入らず、ご近所さんからは「いつも閉まってるね」と言われてることも多々。あまりにもスタジオを使うことが無かったので、荷物置き場のようになっていましたし、子どもたちは、父の仕事場ではなく「家族でたまに来る遊び場」だと思っていたと思います(笑)。

そんななか、新型コロナウイルスの流行で、結婚式の撮影はすべてなくなってしまいました。突然できた時間に戸惑いながらも、「今だからできること」に向き合い、以前から温めていた改装工事に踏み切りました。そうしているうちに、1年前に立ち上げたホームページが少しずつ検索上位にあがり、気づけばお客さまが足を運んでくださるように。そしてちょうどその頃、心強い新しい仲間も加わってくれました。
振り返れば、あの時期には奇跡のようなご縁や出来事が、いくつも重なっていたように思います。

東さんが思う、knotの仕事とはどのような仕事ですか。

実は、あまり「仕事」というふうに考えたことがないんです。目の前にいるお客さまと丁寧に向き合って、そのご家族にとって本当に意味のある1枚を残していくこと。ただそれだけを、ずっと真剣に続けてきました。

フォトグラファーという仕事には、写真家や広告カメラマン、学校写真の撮影、記念写真の撮影など、さまざまなかたちがあります。その中で、僕が大切にしたいと思ったのは、記念写真というジャンルでした。ただ写真を撮るだけではなく、その背景にある気持ちやストーリーまで汲み取っていく。そして、あとから見返したときに家族の成長が感じられるような、knotらしい写真を、これからも撮っていけたらと思っています。

03 「親戚のおっちゃんになりたいんです」

お客さまとの距離感が絶妙だなと感じるのですが、そのあたりで意識されていることはありますか。

僕は、お客さまにとっての「親戚のおっちゃん」みたいな存在でありたいと思っています。家族ほど近すぎず、でも他人ではない。何も考えていなさそうでいて、実はずっと成長を見守ってくれているような、そんな存在。「大きくなったねー!」みたいなね。

そう思うようになったきっかけは、「僕がウェディングの写真を撮ったおふたりは、この先どこで写真を撮るんだろう」と素朴な疑問を抱いたことでした。欲を言えば、この先の写真も僕がずっと撮り続けたい。でも、そう言うからには、お客さまから選ばれる存在でいなければいけない。いつまでも「また東にお願いしたい」と思ってもらえるよう、お店も僕たちも成長し続けたいと思っています。

とても素敵です。だからこそ東さんは家族写真を特別に思っておられるんですね。

そうですね。たとえば、ウェディングの撮影をさせていただいたおふたりに子どもが生まれて、その家族写真や七五三を撮らせてもらう。そうやって、家族が増えていく姿に立ち会えて、「増えたね」なんて言いながら、また撮影のためにお店に来てくれる。そんなふうに、成長や変化を一緒に喜べることが、僕にとっての1番の幸せです。

04 knotが育む「写す」から「紡ぐ」未来

最後に、今後のknotの未来をどのように思い描いていますか。

今後はもっと色々なことに挑戦していきたいと思っています。というより、「やりたいことがある」「何かしてみたい」というひとがいたら、それを一緒にかたちにできる場所でありたい。そんなふうに考えています。

たとえば、スタジオに併設されたカフェがあったらいいなとか。撮影の前後にお茶を飲んで、ゆっくり過ごせるような場所です。写真屋さんというよりは、気軽に遊びに来れるような場所にしたいですね。

単に写真を撮る場所を超えて、誰かの居場所であり続けようとされているんですね。

10年後、20年後、ふと写真を見返したときに、「knot、楽しかったな」「東さん、元気かな」と思い出してもらえたら嬉しいです。そしてまた、ふらっと遊びに来てくれるような、そんな場所でありたいと願っています。

取材・文 / ウィルスタイル株式会社 鈴木 花
写真 / knot 東 裕紀

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knotで生まれるひとときが、
新しい結び目となりますように。